『自遠堂琴譜』嘉慶七年(1802)
伏見无家 打譜(2004年8月16日)
鴎鷺忘机(MP3)(4.1MB)
海上の人鴎鳥を好む者あり。毎旦海上に之き、鴎鳥に從って游ぶ。鴎鳥の至るもの、百もて數ふれども止まず。その父曰く、吾聞く、鴎鳥皆汝に從って游ぶと。汝取り來れ。吾之を玩ばんと。明日海上に之けば、鴎鳥舞ふて下らざりき。故に曰く、至言は言を去り、至爲は爲す無し。齊智の知る所は則ち淺しと。
浜辺に住む者で、かもめの大好きな者がいた。毎朝浜辺に出かけては、かもめと一緒になって遊びたわむれていた。その男のところへ寄ってくるかもめの数といえば、数百を超えるほどの夥しさであった。ある日、その男の父親がいった。「かもめはみなお前のところへきて一緒に遊んでいるということではないか。ひとつ、つかまえてきておくれ。わしはそれをおもちゃにしてみたいのだ。」ところが、その翌日浜辺に出てみたが、かもめはみな空に舞い上がったまま、一羽もその男のところへは下りてこなかった。だから、古人も「最高の(真理を含む)言葉は物言わぬ沈黙であり、最大の行為は(人為を捨てた)無心の行為である」といっているが、常人のさかしらな知識は、至って浅はかなものだ。
『列子』黄帝第二(小林勝人訳)