『西麓堂琴統』嘉靖二十八年(1549)
伏見无家 打譜(2005年11月21日)
宋玉悲秋(MP3)(4.1MB)
九辯 第一段 宋玉
悲しいかな、秋の氣たるや
蕭瑟たり、草木揺落して變衰す
憭慄たり、遠行に在りて、
山に登り水に臨み、将に歸らんとするを送るが若し
泬寥たり、天高くして氣清し
寂寥たり、潦を収めて水清し
憯悽として増ます欷き、薄寒之れ人に中たる
愴怳懭悢として、故を去り新に就く
坎廪たり、貧士職を失ひて志平かならず
廓落たり、羇旅にして友生無し
惆悵たり、而して私かに自ら憐れむ
燕は翩翩として其れ辭して歸り、蝉は寂寞として聲無し
雁は癰癰として南遊し、鵾[昆+鳥]雞 は啁哳として悲鳴す
獨り旦を申ねて寐ねられず、蟋蟀の宵征を哀しむ
時は亹亹として中を過ぎ、蹇、淹留して成る無し
悲しことよ、秋の気というものは。風はさわさわとさびしく鳴っている。それで草木は吹き散り、色も変わっておとろえる。逝く秋には心がいたみ悲しむ。それは遠い旅路で、山に登ったり、水辺に立ったりして、故郷に帰ろうとする人を送る時の気分のようである。秋の眺めはむなしく雲もない。天は高く空気は清らかである。秋の野はひっそりと物影もない。道の溜まり水も収まり引いて、秋の水は澄んでいる。心は悲しみ痛んで、いよいよすすり泣き、薄ら寒い秋の気は人の身にしみる。そんな時、物悲しく心うつろに、気もうちしおれ、住みなれた土地を去って見知らぬ国に行く。不遇に心楽しまず、貧しい士人は心中おだやかでない。ただ広々として寂しい。この旅の空に友達もいないのである。心はいたみ悲しむ。そしてひそかに自分を憐れに思う。燕はひらりひらりと飛んで別れを告げて去り、蝉はもう静かに影もなく声が聞こえない。雁は鳴きつれて南へ旅をし、軍鶏はいやな声で鳴いている。
私は夜明けまで眠られず、こおろぎの夜どおし鳴くのを哀しむ。時は過ぎ易く、すでに今年も盛りを過ぎたのに、ああ久しくなっても何一つできあがらない。
明治書院刊『楚辭』星川清孝訳より
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